本質

聞き耳を立てていた訳ではないのですが、とある男女の会話を耳にしてしまいました。

 

 

 「あなたのこと、本当に好きだったの、でももう好きじゃないの・・・」

 「何故だ!?」


 「だってあなたは変わってしまったわ」

 「俺は変わってない!」

 「いーえ! 以前のあなたとは大違いよ!」

 「一体俺の何処が変わったってゆーんだ!?」

 「120万掛けて整形したその顔よ!」

 「確かに! 俺の顔はAfterだ・・・しかし!それでも俺は俺じゃないか!」

 「それだけじゃないわ! その両腕だって義手じゃない!」

 「確かに! 俺の両腕は義手だしかし! それでも俺は俺だぞ!?」

 「じゃあその両足は何よ!? 義足じゃない!!」

 「たぁーしかにしかし! それでも俺が俺であることに変わりはないじゃ
 ないか!?」

 「本当のこと言うと私知ってるのよ・・・両腕両足どころかあなたの身体全て
 義体じゃない!!」

 「ぅんぬ・・・っ、確かに、俺の身体は全て義体だがそれが何なんだっ!?
 それでも俺は俺でアイデンティティーもしっかりだ!」

 「・・・・実は其れ等はまだ許せるのよ・・・、私が許せないのはあなたの
 脳髄が義脳だってことよっ!!」

 「御尤も!いやしかし!それでも!!やはり、俺は俺なんだ・・・・」

 「・・・・あなたは、以前のあなたとは、別の心になっているのよ・・・」

 「・・・いや、しかし・・・・、それでも俺は、俺・・・・、 なのか?  ・・・」

 「・・・・」

 「そーゆー君も、実は全く俺と同じじゃないか」

 「ええ、・・・そうよ・・・・。 だからあなたが愛した私はもう居ないの。
 今の私は以前の私じゃない・・・・」

 「それでも俺は君を愛しているんだ・・・だって・・・・」

 「何故?」

 「俺は、君の魂を愛しているから」

 「・・・・」

 「・・・・」

 「キモチワルイ・・・」

 「・・・・、 ゴメン」