走る男

 高校生の時の事です。
 その日もいつもの様に、仲のいい友人と二人で下校していました。
 すると友人は急に立ち止まり、何事かを呟き、突然、物凄い勢いで走り出してしまったのです。

 

 ・・・その友人は、未だ行方の分らない侭です。
 きっと、今も、
  走る、走る、走る、走る、哀しくわらいながら、走る、・・・ 。

 

 最期に友人が呟いた言葉を、僕は今でも忘れることができません。

 

 

 「封じ込め、何も彼も、封じ込め、
  封じ込め、偽りの中で暮らす。

 

  跳び越えて、何も彼も、跳び越えて、
  飛び越えて、誰も手の届かない処へ。

 

  誰も手の届かない処へ、
  たとえ孤独でもだ。

 

 

 

 走る、走る、走る、衝動、走る、走る、走る、遣瀬無さ、走る、走る、・・・ 。

 

 真直ぐに睨み付けるようなその眼には、彼にしか見えない、何かが映っているのだと思う。