2006(28)

猫背の男

僕の住む街には、ちょっとした丘があり、丘の上にはちょっとした公園があります。 その公園には、街の人なら大抵の人は、見たことはなくても噂には聞いたことがある、ってくらい有名な、〝猫背の男〟がいます。 毎日、毎日、朝から晩まで、夜中にも見たとい…

異端

今日はクリスマスということで、ちょっくら街に繰出してみました。 街は、 奇麗に装飾されていて、幸せなファンタジーのようで、如何にも“クリスマス!” って感じで。 レストランに、幸せそうな家族。 恋人同士。 街中が、なんだか浮かれてて、楽しそうで、…

本質

聞き耳を立てていた訳ではないのですが、とある男女の会話を耳にしてしまいました。 「あなたのこと、本当に好きだったの、でももう好きじゃないの・・・」 「何故だ!?」 「だってあなたは変わってしまったわ」 「俺は変わってない!」 「いーえ! 以前の…

遁世兄

僕には、引き篭もりの兄がいます。 兄が自部屋に引き篭るようになって、もう十二年が経ちます。 昔はよく、二人でキャッチボールをしたり、魚釣りに行ったり、面倒見のいい、と ても優しい兄でした。 そんな兄が、十七歳の時、修学旅行から帰るなり、自部屋…

実況中継

実況中継! 私は今、小原中学校の夜の校舎前に居ます。屋上を見上げると、ひとりの少年。学生服を着た少年です。 正に今、飛び降りようとしています! 誰か、彼を助けてあげて下さい。 誰か! ・・・・残念、誰も彼に興味が無い。 そして僕は売れっ子レポー…

走る男

高校生の時の事です。 その日もいつもの様に、仲のいい友人と二人で下校していました。 すると友人は急に立ち止まり、何事かを呟き、突然、物凄い勢いで走り出してしまったのです。 ・・・その友人は、未だ行方の分らない侭です。 きっと、今も、 走る、走る…

労働男

僕の知人に、異常なくらい働く男がいます。 その男は懸命に働く。懸命に、倒れるまで、意識を失うまで、働く。 そこである時聞いてみました。 「何故そんなに働くんですか!?何故そんなになるまで働くんですか!?」 「罪滅ぼしです。 親不孝の罪滅ぼしです。 …

鬼と侍

図書館の児童絵本コーナーで、変な絵本を見つけました。 『鬼と侍』 世界の果てで、 冷たい風を間に、向い合う、鬼と侍。 鬼は、今にも襲い繋りそう。 侍は、今にも斬り繋りそう。 鬼の目は、色を映さない醒めた眼で、侍と世界を見ている。 侍の目は、意味を…

Newマッスィーン    ざんす

時は二十三世紀、世界は、最高に合理的な社会になっていた。 「社長! ついに完成しましたよNewマッスィーン! これぞ、長年かけて作り上げた『営業マシーン』です! 〝営業〟に関しては人より何十倍も優れた、〝営業〟だけに特化した マシーンです。 我が社…