サイコロ男

僕の友人に、全てサイコロで決める男がいます。

全てを儚げな眼差しで、「俺は一生黙っていよう」と、

言葉を宙に燃やして捨てる。


そうして男は、丘の上から、空っぽの町を見下ろしています。

いつも一人で。 

男は何も喋りません。死ぬまで言葉を喋らない。

みんな言っています、 

「だから彼には近付くな。誰も彼には近寄るな。せめてそっとしておいてやれ。」


僕にはわかりません。僕には何も、わかりません。

心にもない事は口にできない。

 

 「せめて、灰になった無数の言葉を、凍った世界に降らせよう。」

 

 

全てサイコロで決める男。彼は無口に笑っている。

全てを悟ったような笑みで、「俺は一生黙っていよう」と、

 

「意味など無い」と言葉を燃やす。

 

そうして男は、丘の上から、見下ろしています。

「絵画の世界」。

全て閉じ込めた、絵の中の世界。
 
男は何も喋らない。「語らうことなど何も無い」。
 

俺にはわからない。俺には何もわからない。自分の姿もわからない。


 「せめて、灰になった、死んだ言葉たちを、
                         世界に降らせよう。」