ハルオ

 高校の時のクラスメイトに、暗くて全く目立たないというか全く存在感の無い〝ハルオ〟というやつがいました。

 

 先天性潜在的不幸願望症候群のハルオはいつも一人だった。
 一人で登校し、教室では一日中誰とも話さず寝てばかり。そして一人で下校する。特に何をするというわけでもないのだが、速足で帰る。
 いつもブツブツと「つまんねえな・・・」と独り言。
 とにかくつまらなくてしょうがないのだ。
 世界の全てを知っているわけでもないのだが、世の中の全てがつまらなくてしょうがないのだ。
 学校も、くだらない同級生たちも、街も、人も、とにかくつまらなくてしょうがないのだ。
 いじめがいけないという前に、人殺しがいけないという前に、戦争がいけないという前に、
 「生まれてきたことが、いけないのだ。
  本当は全て意味なんか無いのに、無いのに、何故意識は在るんだ!
  それがそもそもの間違い、不条理、全ての不幸の始まりじゃないか!
  何がそんなに楽しいんだ! オマエ何がそんなに楽しいんだーー!
  オマエラ騙されてる。 オマエもおまえもオマエもおまえオマエ
  さあ! みんなで東の楽園にいこう! そこはとっても綺麗でステキな
 処でどんな夢も叶うというよ    行こーーう     いこーーーう  」

 

 「えー、お宅の息子さんは〝先天性潜在的不幸願望症候群〟という新種
 の病気です。一生幸せにはなれません。
  大丈夫ですよ、最近流行ってます。
  この病気が認められた人は自ら死を選ぶ権利が国から認められていま
 す。
  なんでしたらコチラで楽に死ねる薬を  ・・・」