Newマッスィーン ざんす
時は二十三世紀、世界は、最高に合理的な社会になっていた。
「社長! ついに完成しましたよNewマッスィーン!
これぞ、長年かけて作り上げた『営業マシーン』です!
〝営業〟に関しては人より何十倍も優れた、〝営業〟だけに特化した
マシーンです。
我が社はこれまでに、『接客マシーン』『建設マシーン』『経理マシーン』
『事務処理マシーン』『配送マシーン』、多くの国の『調理マシーン』、種々
様々の作物の『農作業マシーン』、種々様々の物の『製造マシーン』その
他諸々・・・、
と、多くの「それだけに特化した専門マシーン」を作ってきました。
いやぁ~、合理的ですよこりゃ。」
「ほう! こりゃよくできてるざんす。 材料は何ざんす?」
「材料は人間ですよ。」
「ほう! で製造方法は? ざんす。」
「教育です!」
「ほう! ざんす。」
「ははははは!」
「ははははは!
今夜はパーッとヤルざんす!」
エレファントマン
知人、というわけでもないんですが、生まれつき頭と右腕が象のように大きく、醜さ故に母親からも愛されず捨てられた男がいました。醜い男は、誰からも愛されない、死ぬまで。
友人たちとよく話したものです。
「生まれてから死ぬまで、誰からも愛されないっていうのは、いったい
どんなだろうねぇ
さァ、どんなだろうねェ」
生まれつき、象のような頭と右腕。醜い男は、生まれてから死ぬまで、誰からも愛されない。
「お母さん、
僕がこんなに醜くなければ、少しくらい僕を愛してくれたでしょうか。
僕がこんなに醜いばかりに。
お母さんすいません、生まれてどーも、ごめんなさい。」
ああ! 醜い男、笑ったことがない。
ああ! 醜い男、なんという神の気紛れ。
ああ! 正に今、命尽きる、
見世物小屋で過ごした、十七年間を思い。
秘密話
これは、ここだけの話なのですが・・・。
眠くなるよな、四月の昼下がり。縁側の猫を隣に、
「このネコは、いったい何を考えているんだろーねー」
ばかだなーキミは。猫なんだから、何も考えてるわけない。言葉をもた
ないのに、ものを考えてるわけない。
そんな二人を横目に、小さな舌見せてあくびする猫。
全て、大した事ないというふうに。
だって、猫は知っている。
満月の夜、猫たちは集まる。湖のある森で、猫たちのパーティー。
すべて、たいしたことないというふうに。
すべて、なんでもないというふうに。
だって、猫たちは知っている。此の世の真理を知っている。
満月の夜、猫たちのパーティー。
全て、大したことじゃない。
全て、なんでもない。
退屈だった神様が、
パチンと指を鳴らしただけ。
パチンとスイッチ入れただけ。
猫がこっそり僕にだけ、教えてくれた、本当のお話。
ハルオ
高校の時のクラスメイトに、暗くて全く目立たないというか全く存在感の無い〝ハルオ〟というやつがいました。
先天性潜在的不幸願望症候群のハルオはいつも一人だった。
一人で登校し、教室では一日中誰とも話さず寝てばかり。そして一人で下校する。特に何をするというわけでもないのだが、速足で帰る。
いつもブツブツと「つまんねえな・・・」と独り言。
とにかくつまらなくてしょうがないのだ。
世界の全てを知っているわけでもないのだが、世の中の全てがつまらなくてしょうがないのだ。
学校も、くだらない同級生たちも、街も、人も、とにかくつまらなくてしょうがないのだ。
いじめがいけないという前に、人殺しがいけないという前に、戦争がいけないという前に、
「生まれてきたことが、いけないのだ。
本当は全て意味なんか無いのに、無いのに、何故意識は在るんだ!
それがそもそもの間違い、不条理、全ての不幸の始まりじゃないか!
何がそんなに楽しいんだ! オマエ何がそんなに楽しいんだーー!
オマエラ騙されてる。 オマエもおまえもオマエもおまえオマエ
さあ! みんなで東の楽園にいこう! そこはとっても綺麗でステキな
処でどんな夢も叶うというよ 行こーーう いこーーーう 」
「えー、お宅の息子さんは〝先天性潜在的不幸願望症候群〟という新種
の病気です。一生幸せにはなれません。
大丈夫ですよ、最近流行ってます。
この病気が認められた人は自ら死を選ぶ権利が国から認められていま
す。
なんでしたらコチラで楽に死ねる薬を ・・・」